認知症母の遠距離介護記録

91歳独居の母は要介護1。認知症で高齢者のADHD、片耳ろうからの両難聴。眼底出血による視野狭窄と視力低下。そして腰椎圧迫骨折!! 東京~九州で、遠距離介護しています。執筆者は1965生の娘。いろいろあるけど、まあいい!

名前を知らないおばあさんのはさみ

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三挺の糸切りばさみ。右は糸が切れてしまっていますが、母が作っためんこい貝人形。中はきっと貞山堀(ていざんぼり/仙台市)で採ったしじみだよなぁ…。


自分の裁縫箱を開けると古い糸切りばさみが三挺(さんちょう)入っています。
赤いひょうたんの根付けがついた糸切りばさみは
高校時代に、よく行った公園で出会ったおばあさんからいただいたものです。
私が引っ越すときのお別れにいただいたのかな(いただいたシチュエーションはうろ覚えです)。

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おばあさんは、だいたい70代とお見受けします。
当時高校生だった私は、この公園がお気に入りの場所で
ここで過ごす時間が結構長かったのですが
おばあさんも負けず劣らず長かった。
気候のいい日は、朝から夕暮れまでいらっしゃることもありました。


おばあさんはとてもお元気に見えますが、物忘れはそこそこ進んでいるようで、
いつお目にかかっても「こんにちは、はじめまして」とおっしゃいます。
それで私も「はじめまして」と挨拶します。
ふたりともとくに予定もなく、ただぼーっとしているだけ。
行き交う人や、遊ぶ子どもたちをぼんやり眺めています。
ときどき私たちに混ざってくる子どももいます。

なんとなくおばあさんの身の上話を聞いたりして。
息子さん夫婦と暮らしていること。
お嫁さんの話。ちょっぴり愚痴も。
フレンドリーにお話ししますが、翌日にはやっぱり「はじめまして」に戻ります。
お名前は、互いに聞かなかったな。もしかすると伺って忘れたのかもしれません。


そのおばあさんにいただいたのが、この糸切りばさみです。
ボタンをつけたり、つくろいものをしたり、
今でもことあるごとにお裁縫箱を開けるたび、
はさみを見て、認知症のおばあさんのことを思います。
ずっと大切に使わせていただいて、もう40年近く経ちます。

根付けは「のぞきひょうたん」。
中をのぞくと、的を射る絵と
「ナスノヨイチ 即成院」と文字があります。

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たぶんこちらの寺院かな。「そくじょういん」と読むそうです。

ひょうたんのお守り、今も売っているようです。


と、しみじみしていたのは、先週の日曜日に、ほどいた丹前(うちでは「たんぜん」と言います。はんてんとか綿入れとも言うアレです)の古い綿で、丸椅子用の最後のおざぶを作ったからです。手縫いでちくちく…。「ミシン欲しい」と思いつつ、願い叶わず。結局手縫いでざくざくやっています。丹前をほどいたのは去年の8月。ようやく最後のを仕上げました。ほどいてから半年経ってる(大汗)めっちゃ手が遅い&ザツ、でもきっちり再利用できて大満足です。

10年ほど使い倒した夫の丹前。アップリケつけて継ぎ接ぎで使っていましたが、この冬は新調することにして、中綿を取り出しました(結構黒いな)。

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右の長めのものはハギレで。ほかの2枚は使い倒した手ぬぐい再利用で製作。はさみを入れなかったので、ほどくと手ぬぐいに戻ります。三次利用もできるかもw。