介護帰省の最終日の朝のこと。
母が「あのね、リカちゃん人形が20万円で売れたというのは夢の話なのかな」
と聞くので、
「いいえ、それは現実の話ですよ。大丈夫。
昨日私がお母さんにお話ししたら母さんがすごく驚いていたの。
納屋から救出したリカちゃんたちを、きれいにピカピカにして売りに行ったら
全部で20万円になったって」
「ああそうか。よかった。そうよね。現実。
最近、現実か夢なのかよくわからないことがあるのよね」
意外なところで本音が出てきました。
なんとラッキーなんだ、わたし。
「大丈夫よ。夢なのか現実なのか、わからなくなったら
私が教えてあげるから、安心して「わからない」と言ってちょうだい。
ついでに、銀行の機械でお金を引き出すときに「わからない」ときも
私に言ってちょうだい。大丈夫、あんなに難しいの、できないのが普通です」
と、母に伝えました。
「うんわかった。フクはお母さんよりも先に死なないで」
そりゃそうだ。家政婦いないと困るものね。
実は前日に実家の片付けをしていたら、母が兄の幼い頃に大切にしていた飛行機模型を見つけて
わしづかみにして玄関に飾ろうとしたので、私が発狂したのです。
模型のことはわかりませんが
壊れてなければわりと高値がつくかもと思ったのです…。
そんなこともあって、母に
「実は納屋から救出したリカちゃんが20万円で売れましてね」と
打ち明けたしだい。
リカちゃんたちの写真を見て、
「懐かしいなぁ、お母さんはお店で、『家族全員ください』と言ったら
店員さん驚いていたのよね」としみじみする母。
それを聞いてはじめは、写真を見て、母がまた物語を紡いだのだろうと思いました。
人形たちの購入年代はおよそ10年の差がありバラバラだからです。
全員がひとつの“家族”だなんてあり得ない。
しかしふと、「いや、これ本当かも!」と気がつきました。
言われてみれば確かに、リカちゃんが最初にうちに来た日、
ひとりぼっちじゃなかったのです。
リカちゃんのママ、いづみちゃん、くるみちゃん、わたるくん、ごろうくん、みんな一緒でした。
母の言った“家族全員”はきっとこのことなんだな。
気がくと胸熱でした。
やはり、お人形は、もともと母が好きだったんだな。
母の家族へのこだわりを見た気がしました。
「20万円で買取してもらった」話がよほどのインパクトだったのか
母が手持ちの人形を次々と取り出し
「これはおいくら?」と聞くのに少々閉口しましたw
それにしても。「夢か現実かわからない」って
そういう感じなのかぁ。母の表現に、こちらが感無量だったのです。
【過去記事です】