認知症母の遠距離介護記録

91歳独居の母は要介護1。認知症で高齢者のADHD、片耳ろうからの両難聴。眼底出血による視野狭窄と視力低下。そして腰椎圧迫骨折!! 東京~九州で、遠距離介護しています。執筆者は1965生の娘。いろいろあるけど、まあいい!

高齢母に「性の多様性」を伝える難しさ

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母には「性の多様性」の概念がほぼありません。
テレビを見ながら、たまに私がギョッとするような発言をすることもあります。
「母さん、そういうことは今は言ったらダメな時代ですよ」
軽くいなすことはありますが、それで母の中に落ちたとも思えません。


狭い世界で、「これがふつう」と、なにも疑わず長く生きてきた人に、
さらに加えて認知障害が現れた人に、
LGBTQや多様性、ダイバーシティといった、
今まで知らない新しい概念を理解しろというほうが無理な話です。
コロナ禍で、マスクをしなければならないことだって
ちゃんとは理解できないというのに。
多様性といっても、残念ながら母にとっては全く遠い世界の話のようです。


うちは両親ともに熊本市出身で、昭和一桁生まれです。
私も基本、男尊女卑の空気の中で育ちました。
「お風呂は男の人たちが先、女はあとが当たり前」みたいな、
「男子厨房に入るべからず」みたいな、超ナンセンスな家風の中で大人になりました。
父は自分ではまったく動かない人でしたし、そういうことが許される時代でした。
父も母も「フェミニスト」という言葉が大嫌いで、目の敵にしていましたっけ。


もしも今の時代に父が生きていたら、
テレビを見ながら、私が面倒くさいと感じることをたくさん言っただろうなと思います。
男女平等とか、ダイバーシティとか、多分ついてこれていないはずです。


そんな家庭で育ちましたが、いやだからこそ、
娘(私)はゴリゴリのフェミニストであると同時に、
「多様性ヤッホー!」な人に仕上がっています。
身のまわりにふつうにLGBTQのみなさんがいてくれたおかげで、
「性は男女です、以上!」なんて言われると
「頭大丈夫?」と真面目に突っ込みたくなるような。
というわけで、
性的マイノリティも含め、
あらゆるマイノリティみんなが生きやすくなるようにと、それはいつも願っています。
他人事ではありません。
高齢者も認知障害発達障害も心身の疾病も不揃いな家族のかたちとかも、
みんなマイノリティだし。
ある部分は少数派だということもたくさんあるし。


3月に、「法律で同性婚を認めないのは違憲との初判断のニュース記事を見て
「この国はおかしくなってしまった」と、嘆いていた母。
我が母の、耳を疑いたくなるような言葉を聞いて
イスから転げ落ちそうになった私は、つい完全スルーしてしまいました。


性が男女のふたつだけだと、頭の先から尻尾の先まで信じられるなんて
ある意味すごい人生だ。
私はつまんないと感じるけれど、それは比べるものではありません。
母は母、私は私。
人は望むものしか見ないし、各々の価値観の色眼鏡をかけています。

 

柄にもないし、私が声高に主張することはほぼありません。
ただ、ごく個人的なことになると「承服できん!」と、唇を噛むことはあります。
先月、兄も一緒に帰省していたとき、母に
「お風呂でお兄ちゃんの背中を流してあげたら?」
と言われたときに(兄は健常です)
強く「承服できん!」と思いました。

母にはまったく悪気はありませんが、
軽く胸くそ悪いです。
胸くそ悪いけど、文句を言っても何も始まらない…。

少し余裕を失ってしまい、スルーするのが精一杯でした。


修行が足りんな。

まあいい。


※蛇足ですが。LGBTはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーそれぞれの頭文字。「Q」は「クエスチョニング」「クィア」を表します。いろんな人がいる…と思うと私は安心します。それぞれが互いを尊重しあう世界はとても豊かだと感じます。